格差と言ってもいろいろあるけれど、ここで問題とされているのは、派遣社員などの非正規雇用の問題である。
正社員と言えば、ほとんど雇用期限と言うものもなくボーナスなどの恩恵も受け、定年まで無事勤め上げれば退職金、及び厚生年金を受け取ることができる、実に安全で安定した雇用環境にいる人たちのことだ。
一方、非正規雇用とは、正社員以外の雇用労働者、フリーター、パート、日雇い労働者、派遣のことを言う。
非正規雇用にはボーナスも退職金もなく、年金は自腹を切って払った国民年金のみ。
この正規雇用と非正規雇用の格差を取り上げた、VOICEの記事は、なかなか問題のポイントのつかみ方が鋭く、大変わかりやすい。
この格差問題のはじめは1991年頃からだそうで、若い新卒採用者の数を減らし、入口を閉めて、既成社員たちの立場の温存を図り、足りない若い労働力を非正規雇用でおぎなうような、(残酷な)ダブルスタンダードシステムが、じょじょに出来上がったのだそうだ。
一方には高度成長期時代に作られた手厚い保護。もう一方は彼らを支えるために使い捨ての労働力にされる。たとえば、トヨタ自動車などは現在2300名の派遣社員の首切りを続行中であるが、正社員は誰一人首も切られず、賃金の引き下げすらも行われない。
記事の筆者の結論は
対策の方向性は明らかだ。ダブルスタンダードを解消し、痛みを正社員と非正規雇用労働者のあいだで適正に分配するしかない。それには、賃下げや降格、解雇も含めた正社員の雇用規制を大幅に見直し、人材流動化を推し進める労働ビッグバン以外にはありえない。
大変ごもっともなご意見だと思う。でも、現在の日本のダブルスタンダードは別に社員雇用の問題ばかりにあるわけじゃない。たとえば、農業などの第一次産業とのダブルスタンダード。
地方と都会のダブルスタンダード、中小企業と大企業のダブルスタンダード。
周囲を見渡せば、一方の犠牲によって、一方が成り立つようなダブルスタンダードだらけじゃないか。おそらく、雇用問題のダブルスタンダードが解消されたからと言って、さらに別のダブルスタンダードを生み出していくだけだろう。
格差問題はもっと広い観点にたって、社会構造と人間と人間の正しい関わり方をみるのでなければ、解決はしないだろう。
いま「小金持ち」ではなく「貧困層」がブラックマーケットのターゲットとなっています。経済的に困窮している状況や、法知識の無さにつけ込み、甘い言葉で貧困層からさらにお金を搾り取っているのです。生活保護受給者はもちろん、低所得サラリーマンも狙いうちされている「貧困ビジネス」の実態をルポする一冊です。
貧乏人を喰う奴らを暴く! (宝島SUGOI文庫)